学習支援で貧困の連鎖を防ぐ

2014.01.09トピックス

 所得や家庭環境が原因で子どもたちが教育機会を失い、貧困が次世代に引き継がれる連鎖を防ごうと生活保護受給世帯などの子どもたちを対象に、学習支援や、高校への進学援助に乗り出す自治体が増えています。
NPO法人ワーカーズコープ北海道事業本部では、今年度、オホーツク、十勝、空知(そらち)、石狩、宗谷、上川の7総合振興局・振興局から子どもの健全育成支援事業を受託。
生活保護受給世帯の子どもたちへの学習支援に取り組んでいます。

生保受給世帯の学習支援や養育相談
子どもの健全育成支援事業を道内7振興局で

子どもの健全育成支援事業は、北海道が23、24年度に実施したモデル事業を元に、今年度から道内14総合振興局・振興局全てで実施。半数をワーカーズコープが担っています。

内容は、生活保護受給世帯の子どもたち(中高生)への学習支援(通信、拠点(通所)、訪問学習)、保護者への養育相談など。

ワーカーズコープ北海道事業本部では、道内3カ所で運営しているサポステ事業を通じて、もっと子どもの時期から支援ができれば、子どもや若者にとって、地域などで安心できるつながりが築けるのではないか、と考えて事業に応募し、受託。「学び」+「場」+「フラット(対等)」を合わせ、万歳の意味も持たせた「びばっと」と愛称をつけて、事業を展開しています。

順次事業を開始していますが、下村朋史事務局長は「学習意欲が非常に高い子どもたちが、参加している印象だ。通信型学習支援では、返信はこない、と言われていたが、実際には返信があり、びっしりと返事も書いてある。一方で、不登校、引きこもりの子どもも少なからずいる。そうした子どもたち、保護者との関わりは今後の課題」と考えています。

現在は、実施している地域に関係する人や団体のネットワークも生まれ、自治体職員や市民団体の方々、学生のボランティアなどと関係ができ始めています。

胆振を担当している苫小牧第2地域福祉事業所は、8月から通信学習、9月から拠点学習を開始。白老(しらおい)町での拠点学習は、経済的に困難な中で暮らす子どもたちがいることを知ってもらい、地域で支える関係を築きたいと、地元の社会福祉法人が運営する共生型施設を利用しています。子どもたちにとって、安心できたり、気軽に遊びに寄れる場にしていこうと、子どもたちも含め関係者で取り組んでいます。

振興局が管轄する郡部の高校進学率はほぼ100%ですが、この事業は高校進学を進めることと、高校を退学しないようにすることが狙いです。

しかし、高校を卒業しても地域に働く場所が少なかったり、やりがいをもてる仕事がなかなか見つからない現状があります。

そのため、事業本部では、ネットワークを生かし、子どもたちが暮らす地域に、魅力ある働く場づくりに取り組んでいます。

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酪農体験で搾乳に挑戦。搾乳機の付け方をスタッフが指導

子どもたちが担当に、施設と交渉も
十勝・オホーツク、中学生らと合同夏期合宿

釧路第一地域福祉事業所は、十勝とオホーツクの「びばっと」を担っています。

十勝とオホーツクは合同夏期集中合宿を、ネイパルあしょろ(足寄町)で8月9、10日に実施。十勝から中学生5人、オホーツクから中学生2人と、ボランティア、スタッフなど19人が参加、バーベキューや学習、花火、酪農体験などを楽しみました。

最初は緊張ぎみだった中学生らも、大学生ボランティアやスタッフの声掛け、イベントごとに担当リーダーを決め責任を持って行動するうちに、自然に会話を交わすようになりました。

あいにくの雨でしたが、「どうしても花火がしたい!」の声に、担当の中学1年男子が自ら施設と交渉し、花火を楽しむことができました。交渉はとても緊張したようですが、みんなが楽しんでいる姿を見て顔を輝かせていました。

花火の後は学習タイム。“大学生講話”でお兄さん的存在の大学生の話を聞き、将来や大学生活について考えるきっかけに。話をした大学生も自分自身の振り返りになったと思います。スタッフが用意した“楽しい方言”や“グループ対抗英語学習”も好評で、普段人前に出ることが苦手な子が、カードを持ち、みんなの前に立つことができました。

びばっとで大切にしている『単に勉強を教えるのではなく、本人の興味や関心を拡げ、自信や経験を増やし、仲間をつくる場』がそこにはありました。

スタッフが想像していた以上に、子どもたちは感動したようで、すでに冬の合宿の話も出ています。また、十勝の子が「オホーツクのあの子に会いたい」と話し、地域を超えて交流が深まりました。

今回の合同合宿は、地域と心の距離を超える素晴らしいものでした。参加者のつながりが切れないよう、今後も交流できる企画をしていきます。(十勝びばっと 村井千恵)

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